【特集】浜松市沿岸域防潮堤工事完成報告

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令和2年4月末で約7年の歳月をかけて進められた『浜松市沿岸域防潮堤整備工事』が終了します。

中村建設としては、平成25年7月3日から試験施工が始まり、合計5現場の施工を行ってきました。 最後の現場となった、30防潮堤舞阪工区が令和元年9月5日をもって終えたことで、すべての現場が終了しました。

浜松市沿岸域防潮堤整備工事の背景は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災により甚大な被害が発生したことから始まります。 南海・東南海トラフの大震災が想定されている浜松においても大津波の発生が予測され、1000年に一度と言われる大津波の備えとして沿岸部に防潮堤の必要性が議論されました。そのような中、 平成24年6月に静岡県が株式会社一条工務店様から300億円の寄付の申し出を受けたことから事業がスタートしました。その後は、市民や地元企業などからの寄付や、静岡県からの出資もあり総事業費で385億円が集められました。その中で中村建設は、全体の8%にあたる約30億円を請負いました。防潮堤は、浜名湖の今切口の東から天竜川河口までの約177.5kmで高さ13~15mに整備されたものです。

今回施工した防潮堤は、 『浜松モデル』と呼ばれ、CSG工法という技術的特徴があります。CSGとは、良質な土砂にセメントを加えて強固にした材料で、主にダムの堤体に使用されているものです。中村建設で行った防潮堤の施工では、ICT施工も活用しました。GNSSを使用した測量や、マシーンガイダンスによる建設機械での施工も行いました。

防潮堤の現場によっては、約600mから約2000mの施工延長があり、ICTを活用したことにより丁張設置等の作業が不要となり、作業の効率化を図ることができました。今回施工した各現場の所長から、強風が吹く現場での品質管理、および工事完了日が決められた上での、他業者との工程調整、日々の施工量の調整等の工程管理にとても苦労したと聞きました。CSGの品質管理に携わることができ、大変勉強になりました。 土質の品質管理において、 現場密度試験の結果から現場のCSGの強度を計算することが大変でした。

防潮堤事業が完成することにより、宅地浸水面積は約7割低減、宅地浸水深2m以上の範囲を約7%低減することになります。 東日本大震災時に発生した堤防の越流による破堤に対しても粘り強く強固な構造体となっています。

防潮堤は、天端幅がおよそ4m、基礎部分がおよそ200mのCSGをコアとして盛り立て、両側に表面被覆とし盛土を施工し、海岸防災林も造成します。 防災林により、風砂や塩害を低減することができます。

今回、浜松市防潮堤事業という大きな事業に携わることができ、浜松市民として地元のため、中村建設としても大きな達成感を得ることができました。また、中村建設の防潮堤施工に関わる関係者の皆様には、ご協力くださり感謝いたします。