【特集】『石積擁壁の変形・崩壊を抑制する新たな工法』の開発に取組み

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高度経済成長期に構築されたインフラの維持管理は、着々と行われており補強・補修技術においても年々向上しています。しかし道路と土地の高低差がある場合に構築する石積擁壁においては、建設後50年以上経過している物が多く存在していますが、いまだ補強・補修が進んでいません。

そんな中、近年頻発する地震・大雨などの影響から石積擁壁の背面地盤が緩み、崩落を起こす事例が増えています。この対応策として、石積擁壁の周りに鉄柵や補強板などを埋設するほか、積み上げた石の間に短いアンカーを打設しセメント材で固める補強方法などがあります。

しかし、従来の補強方法では表面部分の補強のみで背面地山の緩み自体を解決することができていませんでした。さらに、石積擁壁に重要な水抜きパイプの機能を損ねてしまうため、石積擁壁の崩壊リスクを大きく低減できないほか、景観性も損ねるなどの課題がありました。

そこで、これまでにない『石積擁壁の変形・崩壊を抑制する新たな工法』の開発に取り組むため、開発に掛かる費用を静岡県からの補助金を活用したく『経営革新補助金』の申請を行い、承認を得ることができました。

【新たな工法の概要】

石積擁壁の交点部分にφ10cm深さ10cm程度のコア削孔を行い、削孔機を付けた3mの自穿孔ボルトを打込んでいきます。この自穿孔ボルトは中が空洞になっており先端付近の側面には、複数の噴出口があります。打込み完了後は、ボルト内から10倍発泡ウレタンを注入していきます。注入完了後は、表面部分に座金とボルトを設置し石積擁壁と密着させます。最後に、コア削孔した箇所を既存の石積擁壁で埋めることにより景観性を損ねることなく完成となります。

特に従来の工法と大きく変わっていることは、注入材に発泡ウレタンを使用していることです。発泡ウレタンは硬化が早く水抜きパイプから注入材が流れ出ることがないため機能を損ねることがありません。また、発泡することで背面地山を密にすることができ、従来工法での課題を解決することが新しい工法を確立することができたと思います。

この工法は特許を取得しており工法名についても『IBアンカー工法』で商標登録をしてあります。今後は施工実績を積んでいきさらなる工法の確立をしていきたいと考えています。

 

▼施工前

 

▼施工後